
葵の夜
仕事のこと。人とのこと。自分のこと。 答えの出ない話を、今夜も誰かが持ち込んでくる。 健一、タカ、トム、そしてママ。 小さな店「葵」で交わされる、少し可笑しくて、ときどき考え込んでしまう夜の物語。
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葵の近況
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あなたのために注ぐ、今夜の一杯

知っている人
長く付き合っていれば、その人のことをよく知っていると思う。 好きなものも、嫌いなものも、いつもの酒も知っている。でも、知っていることが増えるほど、その人が分からなくなることだってあるのかもしれない。

ゴングが鳴ったあと
理由もなく誰かを嫌いになることがある。そして、ときにはその嫌悪を正しいものにするために、あとから理由を探してしまう。 嫌いなままでいい。腹が立ったままでもいい。それでも、その試合を終わらせることはできるんだろうか。

えこひいき
誰にでも公平であることは、たぶん正しい。 それでも俺たちは、知らない二人より大切な一人を選ぶことがある。友人も家族も、他の誰かと同じには扱えない。その不公平を、俺たちは何と呼べばいいんだろう。
もう少しゆっくりしたい夜に

【葵の夜】第5巻 知ってるか?
大人になれば、答えが分かると思っていた。 でも五十を越えても、分からないことはなくならない。 それなのに今度は、誰かから「答えを知っている大人」として見られている。 就職を控えた大学生・翔は、インターン先でもらった一言に引っかかっていた。 「まあ、こんなもんでしょ」 怒られたわけでもない。失敗したわけでもない。 なのに、次に何を直せばいいのか分からない。 普通って何だ。 経験って何だ。 ベテランは何を見ている。 AIが仕事を作ってくれる時代に、新人はどこで失敗し、何を経験すればいい。 翔の問いに付き合っていた54歳のシステムエンジニア・健一も、やがて自分が答えを持っていないことに気づいていく。 それでも、知っていることはある。 それでも、渡せるものはある。 そして、その先は自分の想像を越えてもらうしかない。 知らない。分からない。 それでも明日はやってくる。 答えを持っていない大人と、これから社会へ出ていく若者たちが、葵のカウンターで考え続ける十の夜。 『葵の夜 vol.5 知ってるか?』 知らない未来へ進む十の物語。

【葵の夜】第4巻 なにする
もし明日、宝くじで八億円当たったら、何する? 仕事を辞める。豪邸を買う。一生遊んで暮らす。 そんな答えを、葵のオッサンたちが酒を飲みながら本気で考え始める。 ところが、具体的に考えれば考えるほど、欲しかったはずのものが消えていく。 その一方で、何気なく口にしたバスケットコートや学校は、話すほどに形を持ち始める。 そして、自分の番になった健一は何も答えられない。 「何を買うか」ではなく、 「何なら、使ってよかったと思えるか」。 八億円なんて持っていない四人が、八億円の使い道を考え続ける十の夜。 『葵の夜』第4巻。

【葵の夜】第3巻 ダレ
『葵の夜』には、自分のことを考えてしまう夜があります。 夜になると、小さなスナック「葵」にいつもの面々が集まってきます。 54歳のシステムエンジニア・田中健一。妙な話を持ち込んでくるタカ。新聞の向こうから話をひっくり返すトム。そして、カウンターの向こうで静かにグラスを磨くママ。 今回、健一が引っかかったのは「自分」です。 なぜ毎晩、葵へ来るのか。 自分で決めたはずのことを、なぜ後から説明しているのか。 昔の自分と今の自分は、同じ自分なのか。 自分がいない場所で語られる「自分」は、いったい誰なのか。 自分のことなら、自分が一番よく知っている。 そう思っていたはずなのに、考えれば考えるほど怪しくなってきます。 しかも困ったことに、葵の連中は健一が何をするのかを勝手に予想します。 「健一さんなら、そうすると思って」 本人にも分からないことを、どうしてお前らが分かるんだ。 けれど健一だって、タカならこうする、トムならこう言う、ママならたぶんこう考える――そんなふうに、分かったような顔をしている。 『葵の夜 vol.3 ダレ』は、そんな「自分」をめぐって交わされた十の夜の物語。 理由。選択。過去の自分。他人から見た自分。自分のいないところに残っている自分。 自分とは誰なのか。 十の夜を重ねても、たぶん、きれいな答えは出ません。 それでも俺たちは、「あいつなら、たぶん」と考えながら誰かと付き合っていきます。自分自身についてさえ、「俺なら、たぶん」くらいのことしか言えないのかもしれません。 それで困るのか。 それとも――それくらいで、いいのか。 カランコロン。 今夜も、あんたの席が空いています。 自分をめぐる、十の夜をどうぞ。



