本
葵の世界から、もう少し長い夜を。Kindleで読める各巻は、それぞれ独立した物語です。
【葵の夜】第5巻 知ってるか?
大人になれば、答えが分かると思っていた。 でも五十を越えても、分からないことはなくならない。 それなのに今度は、誰かから「答えを知っている大人」として見られている。 就職を控えた大学生・翔は、インターン先でもらった一言に引っかかっていた。 「まあ、こんなもんでしょ」 怒られたわけでもない。失敗したわけでもない。 なのに、次に何を直せばいいのか分からない。 普通って何だ。 経験って何だ。 ベテランは何を見ている。 AIが仕事を作ってくれる時代に、新人はどこで失敗し、何を経験すればいい。 翔の問いに付き合っていた54歳のシステムエンジニア・健一も、やがて自分が答えを持っていないことに気づいていく。 それでも、知っていることはある。 それでも、渡せるものはある。 そして、その先は自分の想像を越えてもらうしかない。 知らない。分からない。 それでも明日はやってくる。 答えを持っていない大人と、これから社会へ出ていく若者たちが、葵のカウンターで考え続ける十の夜。 『葵の夜 vol.5 知ってるか?』 知らない未来へ進む十の物語。
Kindleで読む【葵の夜】第4巻 なにする
もし明日、宝くじで八億円当たったら、何する? 仕事を辞める。豪邸を買う。一生遊んで暮らす。 そんな答えを、葵のオッサンたちが酒を飲みながら本気で考え始める。 ところが、具体的に考えれば考えるほど、欲しかったはずのものが消えていく。 その一方で、何気なく口にしたバスケットコートや学校は、話すほどに形を持ち始める。 そして、自分の番になった健一は何も答えられない。 「何を買うか」ではなく、 「何なら、使ってよかったと思えるか」。 八億円なんて持っていない四人が、八億円の使い道を考え続ける十の夜。 『葵の夜』第4巻。
Kindleで読む【葵の夜】第3巻 ダレ
『葵の夜』には、自分のことを考えてしまう夜があります。 夜になると、小さなスナック「葵」にいつもの面々が集まってきます。 54歳のシステムエンジニア・田中健一。妙な話を持ち込んでくるタカ。新聞の向こうから話をひっくり返すトム。そして、カウンターの向こうで静かにグラスを磨くママ。 今回、健一が引っかかったのは「自分」です。 なぜ毎晩、葵へ来るのか。 自分で決めたはずのことを、なぜ後から説明しているのか。 昔の自分と今の自分は、同じ自分なのか。 自分がいない場所で語られる「自分」は、いったい誰なのか。 自分のことなら、自分が一番よく知っている。 そう思っていたはずなのに、考えれば考えるほど怪しくなってきます。 しかも困ったことに、葵の連中は健一が何をするのかを勝手に予想します。 「健一さんなら、そうすると思って」 本人にも分からないことを、どうしてお前らが分かるんだ。 けれど健一だって、タカならこうする、トムならこう言う、ママならたぶんこう考える――そんなふうに、分かったような顔をしている。 『葵の夜 vol.3 ダレ』は、そんな「自分」をめぐって交わされた十の夜の物語。 理由。選択。過去の自分。他人から見た自分。自分のいないところに残っている自分。 自分とは誰なのか。 十の夜を重ねても、たぶん、きれいな答えは出ません。 それでも俺たちは、「あいつなら、たぶん」と考えながら誰かと付き合っていきます。自分自身についてさえ、「俺なら、たぶん」くらいのことしか言えないのかもしれません。 それで困るのか。 それとも――それくらいで、いいのか。 カランコロン。 今夜も、あんたの席が空いています。 自分をめぐる、十の夜をどうぞ。
Kindleで読む【葵の夜】第2巻 境界
分かり合えなくても、同じ場所にはいられる。 誰かの痛みに、どこまで共感できるのか。 人を信じるとはどういうことか。 怒りを抱えたまま、どう生きるのか。 自分と他人、強い側と弱い側、分かることと分からないこと。 人と人のあいだには、いくつもの境界がある。 それを越えれば分かり合えるのか。それとも、少しずれた場所に立ったままでも、相手の方を向いていることはできるのか。 今夜も健一、タカ、トム、ママは、答えの出ない話をしながら葵のカウンターに座っている。 分からないまま酒を飲み、少し黙って、腹が減ったら玉子サンドを食べる。 『葵の夜』第2巻「境界」。 答えを見つけるためではなく、それでも誰かと同じ場所にいるための10の夜。
Kindleで読む【葵の夜】第1巻 ヒト
『葵の夜』には、答えがありません。 夜になると、小さなスナック「葵」にいつもの面々が集まってきます。 54歳のシステムエンジニア・田中健一。妙な話を持ち込んでくるタカ。新聞の向こうから話をひっくり返すトム。そして、カウンターの向こうで静かにグラスを磨くママ。 話すのは、たいしたことではありません。 人の記憶はどこまで信用できるのか。誰かのためにすることに立派な理由は必要なのか。仕事の価値は数字で測れるのか。一人になりたいのと、一人でいたいのは同じなのか。 健一は考えます。 仕事なら、情報を集め、筋道を立て、答えを出すのは得意です。けれど、ヒトのこととなると、どうもうまくいかない。 分かったつもりになって、誰かの一言にひっくり返される。 もう一度考えてみても、やっぱり答えは出ない。 『葵の夜 vol.1 ヒト』は、そんな葵で交わされた十の夜の物語。 昨日の次が、次の話とは限りません。それぞれの夜に、それぞれの話があります。けれど、どの夜にもヒトがいて、誰かが何かを話し、誰かがそれを聞いています。 記憶。仕事。善意。孤独。昔の自分。 ヒトには、仕様書がない。 だから俺たちは、分かったつもりになっては、また誰かと話すのかもしれません。 カランコロン。 今夜も、あんたの席が空いています。 葵で過ごす、十の夜をどうぞ。
Kindleで読む歌えないオッサンのバラッド:すれ違い
『葵の夜』が短い夜の物語になる前、葵にはもう少し長い夜がありました。 息子が家を出て、ひとりになった54歳のシステムエンジニア・田中健一。 仕事なら、ログを追い、原因を探し、答えに辿り着ける。けれど、自分の人生となるとそうはいかない。 そんな健一が夜ごと立ち寄る小さな店――葵。 そこへある夜、「自分は必要とされていない」と思い詰めた若いSE、小泉リサがやってくる。 健一、タカ、トム、そしてママ。 いつもの面々との会話から見えてきたのは、誰かが悪いわけでも、誰かが間違っているわけでもないのに、人と人とがすれ違ってしまう仕組みだった。 『歌えないオッサンのバラッド』は、現在の『葵の夜』へとつながる原点の物語。 答えのない仕事。届かなかった言葉。残ってしまった後悔。 それでも人は、誰かと話すことで、もう一度歩き出せるのかもしれません。 葵で過ごす、少し長い夜をどうぞ。
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